動物スポーツメディスン科動物スポーツメディスン科

膝関節疾患について 

膝蓋骨内方脱臼/ 外方脱臼 Medial/ Laterall Pattellar Luxation

膝蓋骨脱臼とは?

膝蓋骨が大腿骨遠位にある滑車溝から内方もしくは外方に脱臼する疾患です。
発生の70〜80%は内方脱臼で、その発生の多くはトイプードルやチワワ、ポメラニアン等の小型犬です。
大型犬における発生もみられます。
外方脱臼はラブラドールやゴールデン等の大型犬で多くみられますが、小型犬における発生もみられます。

どのような症状?

膝蓋骨脱臼のグレードにより症状は様々ですが、そのほとんどは間欠的な跛行を呈します。
患肢を曲げたまま数歩歩く、歩き始めにスキップをする、脱臼した膝蓋骨を元に戻そうとして後肢を伸展させてケンケンする等の症状が見られます。
グレード4になると、重度の跛行を呈することが多くなります。

グレード1 指で押すと脱臼するが、指を離すと元に戻る。
普段の生活の中で自然に脱臼することはない。
グレード2 指で押すと容易に脱臼するが指を離しても自然には元に戻らない。
普段の生活の中で自然に脱臼することがあり、元に戻ると跛行がおさまる。
グレード3 普段から脱臼したままで、指で押すと正常な位置に戻せるが、
指を離すと脱臼した位置にもどる。
グレード4 普段から脱臼したままで、指で操作しても正常な位置にもどせない。
どのような状態が手術の適応?

1. 非常に若い時期(3~6ヶ月)に脱臼が見られたとき。

早期に手術をしないと脱臼の整復ができなくなる、もしくは成長にともなって骨が変形し歩行が困難になる可能性が高いため、手術が必要になります。

2. 7ヶ月以上で脱臼のグレードが2で症状があるとき。

若ければ若いほど将来的にグレードが進行し脱臼が整復できなくなることがあるため手術が必要になります。症状が無いもので、ある程度の年齢以上の場合は手術を見合わせる場合もあります。

3. 7ヶ月以上で脱臼のグレードが3以上のとき。

膝蓋骨脱臼の放置によるグレードの進行と膝蓋骨内側の軟骨の消失による痛みが持続することが予測されるため、手術が必要になります。

4. 一般的にはグレード3までが手術の対象となります。

グレード4の場合は完全な回復は見込めずある程度の症状が残る可能性があります。
また大腿骨変形矯正骨きり術など特殊な技術が必要となり手術自体が難しく、合併症もある程度の確率で起こりますので、このようなことをご理解いただける場合のみの施術になります。

5. 膝蓋骨外方脱臼の症例のとき。

脱臼した膝蓋骨によって長指伸筋腱の付着部がこすれ断裂してしまいます。
長指伸筋腱の付着部が断裂すると膝関節内に滑膜炎(関節炎)が起こり激しい疼痛をおこします。
このため、内方脱臼よりも強い症状を呈することが多いです。関節炎の進行を最小限に抑えるためにも、整復手術が必要になります。
また、術後の再脱臼の確率は内方脱臼よりも多い傾向があります。

どのような手術の方法?

1. 滑車形成術

一般的には、膝蓋骨がおさまっている大腿骨遠位の滑車溝表面にある硝子軟骨ごと削って溝を深くする方法が多く用いられています。
しかし、滑車表面の硝子軟骨は再生せず、削った部分と膝蓋骨との接触性が悪くなる可能性があります。
このため当院では技術的に難易度は高いですが予後が一番良いと思われるBlock Resectionを行い、滑車溝表面にある硝子軟骨を温存しながらも溝を深くする方法を用いております。

2. 脛骨稜移動術

これは脛骨稜に一部骨きりを行い、膝蓋骨靭帯の付着部を脛骨稜に付着させたまま内方もしくは外方(内方脱臼であれば外方)に移動させる手技です。
脛骨稜を移動させることで、大腿四頭筋と膝蓋骨、滑車溝、脛骨陵がまっすぐになるよう調整します。
骨切り部分は整形外科用ピン、あるいはピンとワイヤーを用いて固定します。

3. その他

その他補助的に関節包の縫縮術、開放、移植、内側広筋の切離などを行います。

合併症は?

通常グレード3までの膝蓋骨内方脱臼において合併症はまれです。
膝蓋骨内方脱臼グレード4の場合や外方脱臼で、合併症のリスクが高まります。

1. 再脱臼

再手術が必要になります。
脛骨稜の移動が不十分であるため再脱臼する場合や、
脛骨稜を移動させすぎたことにより反対側に脱臼する場合があります。

2. 脛骨の骨折

移動させた脛骨稜は細いピンで固定しています。
十分に骨癒合するまでに激しい負荷をかけると力に負けて骨折することがあります。

3. 固定に用いているピンの破損

早期に動きすぎると固定に用いているピンが折れることがあります。
ピンが折れて固定部が不安定になっていれば再度固定する必要があります。
骨きり部分が癒合していれば再手術の必要はありません。

4. ピンの異常

ピンは通常摘出せず生涯入れておきます。例外としてピンが移動してきたり、刺激を起こしてきたときには抜くことがあります

5. 感染

無菌的手術を行っておりますので感染することはまずありません。
術後、傷が癒合するまでに患部を舐めたりすると感染が起きたり、傷が開いたりすることがあります。

前十字靭帯断裂

前十字靱帯断裂 Cranial Cruciate Ligament Ruptureとは?

あらゆる年齢で起こります。
大型犬ではラブラドール・バーニーズ・ロットワイラー・ゴールデン・ニューファンドランド、中型犬ではコーギー・ビーグル・柴・雑種、小型犬ではチワワ・ヨークシャテリア等で好発します。後肢の跛行や挙上がみられます。
膝関節の安定化を担っている前十字靱帯が断裂することにより、膝関節の不安定性が発現します。断裂した前十字靱帯の断端から炎症性のメディエーターが放出されるため、膝関節の滑膜炎(関節炎)が起こります。
また膝関節不安定性により二次的に半月板損傷が引き起こされます。これらが前十字靱帯断裂時の痛みの原因になっています。
物理的な不安定性から生じている問題ですので、特に大型犬・中型犬では内科的管理は効果的ではありません。
外科的に膝関節を安定化させる必要があります。長期的にみても外科的安定化をおこなうことで一度オンセットされた関節炎の進行も最低限に抑えられると考えられています。
また、関節炎が進行する前、半月板が損傷を受ける前、完全断裂に至る前の部分断裂の時点で診断し、早期に治療することが早い機能回復およびよりよい予後につながります。
そのためには関節鏡検査とTTAを組み合わせての治療が有効です。

治療法は?

1. TTA (Tibial Tuberosity Advancement) 脛骨粗面前進化術

ピンは通常摘出せず生涯入れておきます。例外としてピンが移動してきたり、刺激を起こしてきたときには抜くことがあります。

2. 関節外制動法 Lateral Suture Stabilization

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