腫瘍科の西戸です。
先日行われました、日本獣医がん学会で「サイコオンコロジー」のシンポジウムが行われました。
「サイコオンコロジー」とは心の研究を行う「psychology(サイコロジー)」と
腫瘍の研究を行う「oncology(オンコロジー)」を組み合わせた言葉だそうです。
大学時代に心理学を勉強した覚えはありますが、腫瘍学と重ねて考えるということはありませんでした。
サイコオンコロジーという企画はがん学会でも初めてのことで、もちろん私も初めてお話を聞きました。
講演された先生は獣医師ではなく医師であり、その分野を研究されている先生でした。
先生によりますと、医師は学生時代にサイコオンコロジーを必ず勉強し、患者様とのコミュニケーションのとり方を学ぶらしいです。
なんと獣医師は全く勉強しないので、飼い主様とのコミュニケ―ションをどういう風にとるかというのは現場で学んでいくのが現状です。
私たち腫瘍学を志す獣医師にとって飼い主様への言葉の使い方は慎重に考えていくべきであると先生はおっしゃっていました。
私はこころがけて飼い主様とお話していますが、やはり足らない部分が多くあることがわかりました。
講演の中で最も驚いたのは「沈黙」を作るということです。
沈黙は飼い主様の頭を整理し、考える時間であると。
私たちが話す内容に腫瘍、特に「がん」というキーワードが入ってくると言葉を理解することが精一杯であり、
ものごとを考えるということが難しくなるそうです。
確かに話は聞いているのだけど、記憶されていないという飼い主様は多いと思います。
そこに沈黙という間を少しとるだけで、改善できるひとが多くなる。
私はそんなこと思ってもいませんでした。いかにわかりやすく説明するかばかりを考えてきたからです。
サイコオンコロジーは本当に私にとって大切な学問であると思いました。
これからも学会や勉強会でこの文字を見たら積極的に参加し、飼い主様とのコミュニケーションのとり方を考えていきたいと思います。
腫瘍科担当獣医師 西戸