腫瘍科の西戸です。
ファーブル日記も盛んになってきましたね。
私は先日、臨床フォーラムで分子標的薬のシンポジウムが行われました。
「分子標的薬」って何でしょうか?
あまり一般の方にはなじみのない単語ですよね。
獣医師でもまだまだ新しいお薬で、あまり詳しく知らない先生も多くいるくらいです。
シンポジウムではその効果が出るメカニズムから治療の実際まで講義をしていただき、多くのことを学んできました。
分子標的薬とは従来と違うメカニズムで効果のでる新しい抗がん剤のことです。
従来の抗がん剤は細胞分裂の盛んな細胞に効果がでますので、腫瘍細胞はもちろんのこと、正常にある胃や腸などの消化管、骨髄、毛の細胞などにも作用してしまうのです。
これが副作用です。消化管なら、嘔吐や下痢の症状がでますし、毛の細胞なら脱毛が認められるわけです。犬や猫で脱毛はほとんどないのが現状です。副作用はヒトほど激しいものではなく、ほとんどの動物たちが副作用を予防することが可能です。
さて、分子標的薬は簡単に説明することは難しいのですが、腫瘍細胞中に存在する分裂をしようとする信号を妨げたり、腫瘍細胞に栄養を供給する血管を作りにくくさせたりするお薬です。
私はこの薬がでた当初、このメカニズムなら副作用はほとんどないのでは?とすごく期待していましたが、実際は異なりました。副作用がないわけではないのです。
ただし、腫瘍細胞だけに効果がある薬が研究され開発されているという時代になったのだなの思いました。
10年前と現在では腫瘍に対する考え方から治療法まですごく進歩し、当時は何もできなかった悪性腫瘍でも治療ができるようになりました。今回の分子標的薬を使った治療もその一つではないでしょうか。当院でも分子標的薬の治療をすでに導入していますが、今後も新しい分子標的薬がでる予定です。
今から10年後はどんな時代になっているのでしょうか?
私は副作用のない抗がん剤を普通に使用している時代がくるのではないかと思っています。
腫瘍科担当獣医師 西戸