腫瘍科の西戸です。
先日、東京での腫瘍セミナーに参加してきました。
セミナーの講師はアメリカ腫瘍内科専門医の先生で、3日間の講演でしたが、腫瘍に対する従来の考え方とは異なる点があり、すばらしい講演内容でした。
講演内容は「転移したがんをどう治療するか」です。
何度も言いますが、すばらしいテーマですよね。
従来からある腫瘍の3大治療、「手術、放射線、抗がん剤」はがんが転移した症例に対して大きく効果の得られない治療法だと位置付けられてきました。
そういう背景から、もうすでに転移している動物に対して治療のメリットは少ないと考えられてきました。
転移したがんに対して治療ができれば、より多くの動物をたすけることが可能になることはわかっていましたが、治療法がほとんどなかったのが現状ではないでしょうか。
それができるようになりつつあるのです。
その講演で難しかったのは従来からある「がんとは何なのか」をはるかに超えた「がん細胞の内部で起きている生物学的なことや、転移のメカニズム」を理解することでした。
まだ頭の中で整理できてはいませんが、先生の講演を聞いて非常に興味を持ちました。
「転移とは何が起こっているのか」をまず理解しなければ、治療するために私たちが何をしなければならないのかがわかりません。
先生はその難しい研究から治療を導いたのでしょう。
あきらめてはいけないということです。
先日もお話しましたが、腫瘍の治療は日々進歩しており、新しい治療ができるようになっています。
10年前では治療できなかった腫瘍も今ではいろいろな治療法が選択でき、腫瘍によっては完治が期待できるくらい研究が進んでいます。
新しい治療により、近い将来、全てのがんは治せる病気であるという日がきてもおかしくないほどの強い印象をあたえてくれた講演でした。
腫瘍科担当獣医師 西戸