診療について
動物スポーツメディスン科
全股関節置換術 THR (Total Hip Replacement) について
全股関節置換術
THRとは?
全股関節置換術は股関節形成不全やその他の股関節の異常(レッグペルテス、骨頭骨折等)に対して行われる、根治的治療法で機能の回復に関しては現在のところ最もすぐれた治療法です。機能しない、あるいは痛みを持つ股関節を人工の関節に取り替える方法です。しかし10%の合併症が発生する手術でもあります。6カ月齢からあらゆる年齢で可能な手術です。当院ではスイス・チューリッヒ大学で開発されたセメントレス式人工関節であるKYON社のZurich Cementless Total Hip Prosthesisというチタンの人工関節を用いています。日本で唯一、薬事の承認を得ている人工関節システムです。
なぜZurich Cementless Total Hip Prosthesis?そのメリットは?
人工関節の固定方法には、大きく分けて二通りあり、一つは人工関節を生体に骨セメント(PMMA)を用いて固定する方法と、セメントを用いないで生体の反応によって固定させる方法があります。セメント法の大きな欠点は人工関節の不具合によってインプラントを取り除く必要が生じた時に、全ての骨セメントの除去が困難なことです。
一方、Zurich Cementless Total Hip Prosthesisではその名の通り人工関節の固定にセメントを用いていません。仮にインプラントの不具合が生じ、インプラントを取り替えたり除去する必要が生じた場合、他の方法より容易にできます。Zurich Cementless Total Hip Prosthesisにおけるステム(大腿骨側の人工関節)の固定は、骨ネジを用いておこないます。ステムは大腿骨の内側に固定します。このことによって加重に対する支持と回転力に対する支持の両方が得られます。これに対してもう一つのセメントレスの人工関節システム(BFX:BioMedtrix Total Hip Replacement)は、ステムの固定がプレスフィットによる骨とステムとの固定のみによるため、回転に対する支持が弱くステムの沈下や骨折が起こりやすくなります。したがって当院ではセメントを用いない方法、その中でもZurich Cementless Total Hip Prosthesisを選択し中型〜大型犬の全股関節置換術をおこなっています。
全股関節置換術の合併症は?
可能性として繰り返す脱臼、インプラントの緩み、骨折、インプラントの破壊などの合併症が挙げられます。 約10%に合併症が見られ、再手術やインプラントを取り除く手術をおこなう可能性があります。 合併症の発生率は犬種によっても異なりますが、超大型犬や術前の脱臼の程度が激しいもの、大腿の筋肉の萎縮が激しいものでは多くなる傾向が見られます。
Micro THR (Total Hip Replacement) 全股関節置換術
Micro THRとは?
レッグペルテス (無菌性大腿骨頭壊死症)