診療について
動物スポーツメディスン科
周術期の疼痛管理について
– ペインコントロール –
ペインコントロールは必要?
一般的に、整形外科手術には重度の疼痛が伴います。
人と同様に犬猫においても、この重度の疼痛を放置すると生理的ストレスにより治癒の遅れや免疫抑制が生じ、合併症や死亡率増加といった問題を引き起こすといわれています。
このようなことから、周術期の適切なペインコントロール(疼痛管理)をおこなうことがペットのQOL(Quality of Life)の向上につながると考えています。
一般的なペインコントロールはもちろん、高度に痛みを取り除くことが可能な下記の特殊な麻酔法によるペインコントロールも取り入れています。
ご希望の方は担当獣医師にお伝えください。
硬膜外麻酔
適応:THR(股関節全置換術)、TTA(脛骨粗面前進化術)、大腿骨変形矯正骨切術、骨折、膝蓋骨脱臼等
メリット | 硬膜外麻酔法は、鎮痛薬の全身投与に比べ局所におけるより強力な鎮痛効果が得られます。 また使用する鎮痛薬の容量が非常に少なく済むため、鎮痛薬の全身投与に比べ副作用(呼吸抑制・過度の鎮静・嘔吐・体温調節異常など)を大幅に軽減することが可能です。 |
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デメリット | ①感染・感染のリスクを減らすために硬膜外麻酔を行う腰背部に毛刈りと消毒を行います。皮膚に感染を認める場合は硬膜外麻酔を行えません。毛刈りを行った部位に発毛遅延がみられることがあります。 ②自力排尿不全・一時的な膀胱の機能不全により自力排尿ができなくなることがあります。多くは術後24時間以内に解決します。(圧迫排尿やカテーテル導尿で処置が可能) ③出血・血液凝固機能に問題がある場合は行えません。 ④神経障害・犬では硬膜外麻酔を行う部分は脊髄の尾端になるため、神経障害のリスクはほぼないと考えられます。 |
領域麻酔:局所神経ブロック
手術する領域を支配する感覚神経を局所麻酔薬でブロックする方法。 電気刺激装置を使用して、感覚神経の位置を特定することで正確に局所麻酔薬を投与でき、合併症である神経損傷を最小限に抑えることができます。 全身性に投与する麻酔薬の量を減らすことが可能で、麻酔による副作用が軽減できます。かつ、手術する領域の術中・術後の良好な鎮痛が得られます。 適応:肘関節関節鏡および鏡下FCP切除、撓尺骨骨折、肘関節脱臼、上腕骨遠位骨折、膝蓋骨脱臼等